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【深夜放送】巻き込まれるファンタジー

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小学校中学年くらいから高校に上がる頃まで、むさぼるようにマンガを読んだ中でも、むさぼるように少女まんがを読んでいた時期があった。

特に小学校4年の頃に最初に少女マンガから受けた強い違和感は忘れられない。ある種の不快感というか、不快感になりそうなほど強い違和感があった。

大前提が受動的なのだ。トマス・ハーディみたいな世界といったらいいだろうか。トマス・ハーディに引き込まれる理由もだいたい同じである。『テス』などはそれ自体テーマになっている。

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少年マンガなら、学ラン姿の高校生が月に行こうと、ボクサーが強制収容所みたいな禅寺に行こうと、基本的には「好きでいく」というか、少なくとも行かなくていいのに行くことになっている。

だが少女マンガの場合、いきなり無人島とかに連れ去られる。読者としては、わけのわからぬままに、主人公は何かに巻き込まれる。それだから続きが気になるわけだが、そこには言いしれぬ不安が募る。少年マンガには、それがめったになかった。

連れ去られようと、好きで行こうと、そこから先がようするにメインステージなのであって、そこに至るまでの経過など、実は作者は省きたいのだろうが、小学生にはそういった大人の事情がわからないので、本気で不安になってしまうのだ。

しかも、常識的には(というか男子小学生的には)「おうちに帰ることこそ最優先」であるべきなのに、いつしか「そこにいるある男と結ばれるのが最優先」に切り替わる。この種の恋愛感情も当時はさっぱり理解できなかったので、主人公に燃え上がる恋愛心理ゆえに、読んでるこっちはいっそう不安になってしまう(「そんな男放っておいて早く帰ろうよ〜!」)。

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でもいつか理解できない恋愛心理に私まで釣り込まれて、最後まで小遣いを使って読み切っていた。言いしれぬ不安とともに、強烈なカタルシスを得る。すごい、すさまじい世界だと思った。

残念ながら、一番すごかった(病気になりそうなくらいの)作品は全然Kindle化されていない。早くKindle化しましょう。Kindle化されているのは次の作品で、これは懐かしい良作である。ただし親が読ませてもいかにも安心な「良作」は、残念ながら病気になりそうなほどの印象は残さない。

天使のセレナーデ 1
天使のセレナーデ 1 上原きみ子

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